わかりやすい順番で<10日間>学び直し高校英語、発売開始!
- 作者:岡田 順子
- 発売日: 2020/11/26
- メディア: 単行本
閑話休題 ー私とSLAの記事を書くに至った「新英語教育」の記事
ここで、「私と第2言語習得理論」の記事を書くに至った、私が「新英語教育」に書いたある記事を載せておく。
ただし、私の批判している羽藤由美氏の記事を紹介できないので、羽藤氏に申し訳ないのであるが。
「新英語教育」9月号p2.
6月号巻頭論文に関する一考察
〜外国語教育としての教育理念を見失わないために〜 岡田順子
「新英語教育」6月号巻頭論文の一番大きな誤謬は、羽藤氏が、日本の児童・生徒・学生は、英語を「第2言語」としての学んでいる
と認識している点にある。氏のこのような認識は、「英米の旧植民地のように、日常的に英語が使われる環境であろうと、日本のように教室外ではほとんど使われない環境であろうと(中略)、第2言語習得のメカニズムは変わらない」と述べていることに端的に表れている(本当は前者の環境こそが第2言語習得、後者のような環境は外国語教育である)。
日本では、英語は、「外国語教育」の一環として学ばれており、「第2言語」として学ばれているわけではない。これは本質的な違いである。「第2言語」を習得する場合というのは、別の言語を「第1言語」として学んだ人が、何らかの理由で海外に行き、そこで
定住する場合など生活のためにその国の言語を学ぶことになったような環境を指す。または、氏自身があげているように、どこかの国の植民地となり、その国の言語を学ぶことに
なったような環境のことを指す。そして「第2言語」は、しばしば「権力の言語」となる
構造になっている。
日本の英語教育は、これには相当しない。
「第1言語」(多くの場合は日本語) とは違う体系を持った言語を学ぶことにより、第1言語を相対化し、言葉の面白さ、恐ろしさを理解し、みずからの言語生活が豊かになるために学んでいるのである。いわば、「人間教育」の一環として学ばれるのが「外国語教育」である。
日本が「外国語教育」としての教育理念を
放棄し、第2言語習得に向かおうとする昨今の風潮は本当に正しいのであろうか。そんなことを痛感した論文であった。
注:私自身は、第2言語習得理論を学んだ者である。
「第2言語習得理論と私」その2
コロンビア大学での1年目は、先生方が日本の英語教育事情に精通なさっていたこともあり、現在教わっている教室活動が「第2言語習得理論」からきたものである、という感覚はほとんどなかった。
だが、明確には覚えていないが、同じくクラスの同僚(生徒イコール先生.) から、「第2言語習得」というのは、たとえば、メキシコからね移民が、アメリカ合衆国に行き、そこで生活せるために、英語を「第2言語」として学ぶ、と言ったような状況を指すのだ、と聞いた。「ああそうなのか」と思い、私の頭の中で、「第2言語」を学ぶということと、「外国語」を学ぶということは違うことなのだ、という認識が生まれた。ただ、「第2言語を学ぶ」ことと、「外国語を学ぶということは、どのように異なるのかについて無知であったし、「第2言語習得理論」から生まれた教室活動が日本の教室でも
上手くいったときなどは、よい授業ができた、と気分をよくしたものである。
本日はここまで。
第2言語習得理論と私 その1
これから、第2言語習得理論と私について、
しばらく時間も空間もとって書いていきたいと思う。
1 第2言語習得理論との出会い
私が第2言語習得理論(以下SLAという) と出会ったのは、高校教師になりたての新任だった頃だと思う。これを読んでいる皆さんが、ご自分は何をしていた時期かを思い出すきっかけとして、年がバレるけれども、年代を言っておこう。1986年、昭和62年くらいのことである。
新任1年目にして、埼玉県立和光国際高校という、英語教育に革新的な学校に赴任することができたが、私は、新しい英語教育とは何か、について、常に疑問を持ち、悩んでいた。
これは、自慢だが(笑)、勤務校では、英語の先生が私を含めて5人おり、「英語の授業は英語で」というどこかで聞いたような共通理解があり、本当に「英語の授業は英語で」やっていたのである。もう今から30年も
前の話だ。ただ、だんだんと、まる1時間の授業を英語で行うのは困難だと気付き始めるのであるが。
そうした状況の中、私は、Krashen と出会った。その本が、SLA関係の本だということも知らなかった。ただ、彼の言うインプット仮説に大変魅了された。i+1のcomprihensible
inputが、学習者の言語習得を促進するという仮説である。初めて、私は、英語の授業は英語で、の意味がわかった気がした。
私のように、クラッシェンに魅了された人は何だかんだ言っても多いと思う。
話は少し飛ぶが、私は、教員生活四年目で
コロンビア大学ティーチャーズカレッジ東京校(当時は神谷町にあった) に入学している。
より良い授業を目指してのことであるが、このとき、私は、自分の人生を英語教育に捧げようと決心するのである。
本日はここまで。
いつか、というか近い将来書きたいこと
私は、近い将来、書きたいことがいくつかある。そのひとつがやはり、自分の専門の語彙指導だ。こちらは、もうすでに、詳しい章立てまで、考えてある。もちろん、私が一番望む形での出版が出来れば、ということになるが。
第1章 日本の高校生の語彙学習方略調査
2006年の結果と2020年の結果の比較
日本の高校生の語彙学習方略は変わったか?
変わっていないとすれば、何が問題か?
第2章 語彙の導入活動
*単語の予測
* 未知語の推測 選択注を用いて、生徒が
楽しめる未知語の推測活動のやり方とは?
*その理論的背景
第3章 語彙の定着活動
*ビンゴのバリエーション、ワードサーチの
バリエーション、communicative クロスワード
* modified repetition
* ランキング&ピラミッド
他
*その理論的背景
*ワードカードストラテジー
*ワードカードストラテジーを補う、多読指導のあり方 図書館方式、毎日プリント1枚方式
*dictionary strategy
第5章 単語テスト大改造計画
*単語集を使った単語テスト
*教科書の新出語を使った単語テスト
*単語テスト作成モデル
*56種の単語テスト
*いろいろな側面をテストする。
*生徒が自分で作る自分だけのテスト
まとめ
こんな感じ。新しい語彙指導書ができますように。
単語テストのいろいろpart1
単語テスト作成モデルにしたがって次のような活動が出来る。
1 つづり →意味 短い文脈、発信
「間違い語はどれだ?」
先生があるひとつの文を読む。常識的に考えて、本当ならT, 間違い語があれば、Fとし、その間違いを訂正する。
⑴ C ars are usually expensive.
(2) I don't understand math,
It is easy for me.
(3) We should remember importance of war.
(4) We must learn from the future.
That is, we must learn from history.
(1) T (2) F easyをdifficult (3) F war を peaceに,
(4) F futureをpastに,
2 発音→意味 短い文脈 発信
「最後の単語はどれだ?」
1 He lost his arm and legs while clearing ( ).
2 The victims are not only farmers and childrs,
but also ( ).
3 Farmers and children are killed or injured.
They are ( ),
選択肢
soldiers, landmines, victims
注 1から3の英文の括弧の前までは、先生が
読む。文字で見せるのは選択肢のみ。
3 発音→意味 文脈なし、 理解
スーパースロー
先生が発音する単語を聞いて、ある語は何番めだったかを答える。先生は、ものすごくゆっくり読む。
culture........
influence......
fact ........,.....
attract........,
depend.........
問題 影響、という語は何番めでしたか?
4 普通にファースト
先生が下の日本語の意味の単語を何回読んだか、回数を数えて答える。
1 「比較する」という語は何回読まれましたか。
先生の読み(超速く読む)
correct, compare, culture, confront, culture,
compare, compare, confront, correct, compare,
confront, culture, correct
答え 4回。
スローは、その語を内在化する効果、
ファーストは、瞬発力を鍛える効果がある。
✳︎とりあえず今日は、ここまで。
単語テスト、その無限の可能性
単語テストといえば、日本語から英単語を書く、英単語から、その日本語訳を書く、というテストが思い浮かぶであろう。
しかしながら、単語テストには、何十という種類のテストがあり、学習者の単語に対するいろいろな側面の知識を測ることができる。
この記事では、単語テスト作成モデルを概観し、どのようにして、単語テストを作ったらよいのかを考えることにする。
⑴ 意味テストと語形テスト
単語テストの中心はいうまでもなく意味テストである。しかしながら、発音がわかる、綴りが書けるといった語形テストも時には必要であろう。単語の意味、発音、綴りの3つを
相互にcue とするテストが考えられるので
1 発音から意味
2 意味から発音
3 綴りから意味
4 意味から綴り
をそれぞれ書かせる意味テストが考えられる。
また、
5綴りから発音
6 発音から綴り
を書かせる語形テストがあるので、意味テストと合わせて、6種類の単語テストが考えられる。
これに付随する属性として、文脈のある、なし(文脈なし、1文のみの例文、2文以上の文脈あり)の3つが考えられる。
また、理解だけを測ればよいのか、発信できるところまで測りたいのか、の2つが考えられる。
したがって、単語テストは、少なくとも、理論上は、6種類×3×2=36種類の多様なものが考えられる。
(2) 単語の知識の深さを測るテスト
また、単語には、いろいろな、知識がある。
コロケーション、コノテーション、連想語、
接辞、文法的使用法、単語と単語の関係、
レジスター、認知速度である。これらを目的とするテストも必要なので、8×3×2=48種類の単語テストが考えられる。
36+48=84
84種類の単語テストが考えられることになる。(効果抜群 語彙の定着をさらに促進する
単語テスト集、岡田順子著、アルクオンデマンドブックス 2007の単語テスト作成モデルを改良)。
次の記事で、単語テストのいくつかの例を
考えでみたい。